介護保険と痴呆症その2

表1 認定調査において痴呆と関連深い項目、選択肢、その判定基準


項 目

選択肢

選択肢の判定基準

<ひどい物忘れ>

ない

ひどい物忘れが(過去に1回以上あったとしても)過去1か月に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいう。寝たきりや痴呆等の理由により起こり得ないほどひどい物忘れが現れる可能性がほとんどない場合も含まれる。

ときどきある

ひどい物忘れか少なくとも1か月間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。頻度は「特記事項」に記載する。

ある

ひどい物忘れか少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。


<理解>

毎日の日課を理解することが

生年月日や年齢を答えることが

面接調査の直前に何をしていたかを思い出すことが

自分の名前を答えることが

今の季節を理解することが

自分かいる場所を答えること が

できる

いつでも、ほば正確な回答ができる場合をいう。
例えば、数日のずれかある。
あるいは、日課、季節、調査直前にしていたことなどについておおむね把握している。
姓を聞いて名前を思い出す等の場合も含まれる。

できない

質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、全く回答できない場合をいう。また、次の場合も含まれる。

独居者等で,聞き取りによ っても判断できない場合

まだら痴呆等の理由により、ときどきできたりできなかったりする場合

意志確認かどうしても不可 能な場合

植物状態等の意識障害が ある場合
<行動>

物を盗られたなどと被害的になることが

作話をし周囲にいいふらすことが

実際にないものが見えたり、聞こえることが

泣いたり、笑ったりして感情が不安定になることが

夜間不眠あるいは昼夜の逆転が

暴言や暴行が

しつこく同じ話をしたり、不快な音を立てることが

大声をだすことが

助言や介護に抵抗することが

目的もなく動き回ることが

「家に帰る」等といい落ち着きがないことが

外出すると病院、施設、家などに1人で戻れなくなることが

1人で外に出たがり目が離せないことが

いろいろなものを集めたり、無断でもってくることが

火の始末や火元の管理ができないことが

物や衣類を壊したり、破いたりすることが

不潔な行為を行うことが

食べられないものを口に入れることが

周囲が迷惑している性的行動が

ない

その行動が,(過去に1回以上あったとしても)過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度で現れない場合をいう。植物状態等の意識障害、寝たきり、痴呆等の理由により、徘徊等が起こり得ないなど、その行動が現れる可能性がほとんどない場合も含まれる。

ときどきある

少なくとも、1か月間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。2つ以上の状況を例示している選択肢について、いずれかが、ときどきある場合も含まれる。頻度は「特記事項」に記載する。

ある

少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。
2つ以上の状況を例示している選択肢について,いずれか1つでもある場合も含まれる。



表2 アルツハイマー病と脳血管性痴呆の症候・所見のポイント


アルツハイマー病

初期の主症状は、記憶障害である。また、意欲の低下、物事の整理整頓が困難となり、時間に関する見当識障害が見られる。中期には、記憶の保持か短くなり、薬を飲んだことを忘れたり、同じ物を何回も買ってくるようになる。後期には、自分の名前を忘れたり、トイレがわからなくなったり、部屋に放尿するようになる。また失禁状態に陥る。

脳血管性痴呆

初発症状として物忘れで始まることが多い。深部腱反射の亢進、足底反射仮性球麻痺、歩行異常等の局所神経徴候を伴いやすい。一般に、記憶障害はかなりあっても、判断力は保持されており、人格の崩壊は認められない。


表3 アルツハイマー病の診断基準


「アメリカ合衆国精神医学会作成 精神疾患の分類と診断の手引き 第4版(DSM−W)」による診断基準を満たすものであって、以下の疾病によるものを除く。

1.外傷性疾患:頭部外傷、硬膜下血腫など
2.中毒性疾患:有機溶剤、金属、アルコールなど
3.内分泌疾患:甲状腺機能低下症、Cushing病、Addison病など
4.栄養障害:ビタミンB12欠乏症、ぺラグラ脳症など

診断基準

(1)以下のa.およぴb.の両者による多彩な認知欠損の発現が認められること。
a.記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)
b.以下の認知障害の一つ(またはそれ以上)

ア.失語(言語の障害)
イ.失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず、動作を遂行する能力の障害)
ウ.失認(感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識または同定できないこと)
エ.実行機能(すなわち、計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
(2)(1)のa.およびb.の認知欠損は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示すこと。
(3)その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではないこと。
参考にした診断基準:精神疾患の分類と診断の手引き 第4版(DSM−W)(アメリカ合衆国精神医学会作成)
(米国精神医学会が作成した精神疾患の分類と診断の手引き第4版(DSM−W)を参考に,厚生省が「特定疾患にかかる診断基準」で示した診断基準を引用)


前のページへ

次の資料へ